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会長  福本 陽平

 恒例の平成25年度山口大学医学祭が、今年も盛大に開催されることに心より御祝辞を申し上げます。この医学祭は、山口大学医学部の医学科、保健学科の学生の皆さんが英知をしぼり、汗をかいて、市民の皆さまとの交流のあるイベントとなっていますが、一方、このお祭り・イベントに対しては、社会から学生諸君の医学・医療に対する姿勢、考え方、意気込み、熱心さ、更にやる気度が問われていることでもあります。この医学祭に、若い青春のエネルギーをぶっつけると共に、知性の片鱗も見せて欲しいと思います。

 

 さて、平成25年8月23日の新聞紙面はイチローの日米野球4000本安打の偉業で飾られました。野球の本場、米国でもメディアや大リーグの選手らはこぞって、イチローに祝福と称賛の言葉を贈っています。新聞のコラムには、この天才打者が絶えず自分の打撃フォームの研究を怠らず、常に進化を続けていることについて、スポーツ科学の専門家がイチローの打法の変化とその合理性について評しています。更に、ニューヨーク・ヤンキースの同僚は、イチローが誰よりもよく練習をし、体の自己管理を徹底している“真のプロだ”と語っています。イチローの言葉をそのまま引用すれば、「4000本安打を打つためには8000回以上も(凡打)で悔しい思いをした。それと向き合ってきた。誇れるとしたらそこではないか」(毎日新聞)とクールに語っています。

 

 医学部生の皆さんには、将来、真のプロ(プロフェッショナル)になって欲しいと願っています。教育学の学者は、医師(医療者)などプロと呼ばれる人はその成長過程において、難しい言葉で「省察的(反省的)実践」を行っていると言っています。これは目の前の患者さんが、常に教科書的な知識や技術だけで対応できるとは限らないので、プロの医師は経験などによって培った潜在的な思考や技術、あるいは暗黙知といわれる無意識の能力を駆使して、複雑な症状を呈する患者さんの診断や治療に当たっているということです。このようなハイレベルの優れたプロの能力を身に付けるには、自分自身が行った行動を省察(反省)すること(習慣)が必要であり、プロは自らを常に振り返りながら、創造的に自分自身の能力を発展させるとのことです。

 

 この意味で、奇しくもイチローが語る「悔しい思いをしたことを忘れず、向き合ってきた」とは、まさに自分の打撃法を常に振り返りながら「省察的(反省的)実践」を、自分の野球人生を通して実践してきたことであり、偉業を重ねるイチローは真のプロと言えるでしょう。

 

 せっかくの楽しいお祭りに、教育学の話をして熱をさましたかもしれませんが、今年の医学祭「HEART BEAT ~医心躍動~」が盛り上がり、皆さんのエネルギーが“プロフェッショナルへの道”につながってゆくことを祈念します。
─第69回医学祭に寄せて─

社団法人 霜仁会

第69回山口大学医学祭公式HP

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