病院長 田口 敏彦
第69回医学祭の開催にあたりお祝いを申し上げます。
医学祭には「祭り」という言葉がついています。祭りとは神霊奉仕の行事、記念・祝賀のために行う行事という意味もありますが、広義ではある時期の特売宣伝の意味を持つという意味もあります。この意味では、お祭り広場やバザーで医学部内の親睦を深める意味もありますが、市民と学生の交流の場であり、医学部を大いにアピールする意義ももっています。
この文章を書くに当たり、私の学生時代の医学祭のことが懐かしく思い出されました。もう30年以上も前のことですが、医学祭ではお祭り広場を担当しました。季節外れではありましたが、盆踊りを企画することになりました。梶返しの町内会で盆踊りのやぐらがあることを聞き、そのやぐらをお借りする交渉からはじまり、当日は事前の踊りの講習会の甲斐もあり、非常に盛況でした。このような企画を通して感じたことは、宇部市民のみなさんが非常に暖かい目で自分たちを見てくださり、期待して下さっていることでした。医療に求められるものが非常に多くなっています。医療の問題を医療者だけが論じる時代ではありません。医療者以外の発言も多くなり重要なものもたくさんあります。学生時代に社会との接点をもち「世間の目」を感じることは非常に大切なことだと思います。
本年度のテーマは「HEART BEAT ~医心躍動~」ということだそうです。
まさに医学は再生医療などの長足の進歩により技術的な面では躍動的な進歩を遂げております。いっぽうでは、医学の役割が、ただひたすら長寿のみを追求する時代ではなくなっています。医学の究極の目標は健康ですが、健康を目指しながら、健康という概念を医学のみでは捉えられない価値概念になってきています。それは健康という概念が科学としての医学を超えた価値概念であるからです。
医学祭が市民の皆様との交流の場であり、健康や医療に関する知識を広める役割を担っています。その際には、自分自身に対しても「人間とは何か」「生と死とは何か」「科学とは何か」ということを熱っぽく問いかける機会にしてほしいと思います。
学生諸君が感性と知性をバランス良く発揮して医学祭運営に当たって頂けることを期待しています。